個人事業でビジネスをされている方は事業内容も事業の進め方も全て自分一人で決定し進めていきます。
まさに「ルールは俺が決める」という状態ですから、組織が決めたルールなどに縛られることはありません。
迅速な意思決定によってスムーズなビジネスをすることができます。
一方、株式会社を設立する場合には、会社として法人を作ることになります。
法人は法律上人格を持つものとされ、そこには会社ならではのルールがあります。
社長といえども一応は会社のルールの範囲でしかビジネスを進められません。
このルールは書面にして作成しておきます。
これを定款といいます。
会社の憲法とも呼ばれることがある定款にはどんなことを記載するのか見ていきましょう。
個人事業では全てのルールを自由に決めることができますが、会社の場合はそうはいきません。
例え社長となるあなたでも、その考える内容を自由に定款の記載事項とすることはできません。
定款の作成にも一定のルールがあります。
記載事項を大枠で分類すると
「絶対的記載事項」と
「相対的記載事項」、そして
「任意的記載事項」に分けられます。
ではそれぞれどんなものか見ていきましょう。
これは定款を作成するにあたって必ず記載しなければならない事項をいいます。
この事項のうちどれか一つでも欠けていると定款としての効力がなくなってしまいます。
絶対的記載事項には以下のようなものがあります。
・事業目的
会社が行う事業の内容を網羅して記載します。
目的欄に記載のないビジネスを行うことができません。
ですから将来行う予定のある内容は定款作成の時点で記載するようにします。
・商号
商号は会社の名前のことです。
商号の内には必ず「株式会社」の文字を入れる必要があります。
株式会社○○又は○○株式会社となります。
同一の本店所在地においてすでに登記された商号と同一の商号は使用できません。
・本店の所在地
本店の所在地の住所です。
最終地番まで記載することもできますが、ちょっとした引越しでも定款の変更手続きが必要になるので、これを避けるために最小行政区画(市区町村)までの住所を記載しておくこともできます。
・設立に際して出資される財産の価額、またはその最低額
株式会社設立にあたって出資される金額です。株式会社は株の発行の対価として出資を受けるわけですが、これがいわゆる資本金となります。
・発起人の氏名または名称、及び住所
設立時の発起人となる人の氏名と住所です。
印鑑証明書に記載されている名前や住所と一字一句同じ文字で記載しなければなりません。
住所については普段用いている住所表示と若干異なることがあるので注意してください。
・発行可能株式総数
会社が発行できる株式の総数を記載します。
この事項は定款の作成時には決めておくことは必須ではないのですが、その場合でも結局会社成立の時までには決定して定款に記載しなければなりません。
そのためには定款変更の作業が必要になり手間ですので、最初の定款作成時に記載しておく方が便利です。
相体的記載事項は絶対的記載事項のように定款の効力を左右することはありません。
つまり記載しなくても定款を作ることはできますが、定款に記載しなければその事項についての取決めの効力が発効しないものをいいます。
例えば次のようなものがあります。
・金銭以外の現物出資をしているとき
・会社成立を条件とした財産の引き受けがある場合
・発行する株式について譲渡制限や取得制限など条件付きにする場合
・取締役会や監査役、会計参与、委員会など会社内に機関を設置する場合
・取締役会の招集通知の期間短縮
・株券を発行する場合
・取締役の任期を原則よりも伸ばす場合
・公告の方法を定める場合
上記の内容を定める場合は、例えば定款以外の会社ルールブックなどに記載したとしても、会社に法律上そのルールがあるとは認められません。
もちろん社長さんが思いつきで「監査役を設けるぞ」と言っても、定款にその定めがなければ監査役を設置できません。
定款に無い場合は定款を変更して必要なルールを設定する必要があります。
ですので、上記の様な内容は定款に記載しておきます。
任意的記載事項はたとえ定款に入れなくても定款自体は無効になりませんし、また定款以外の別の書面やルールブックに記載することでもその効力を持つことができる事項です。
例えば次のようなものがあります。
・会社の事業年度の定め
・役員報酬について
・株式の名義書き換えの手続きについて
・定時株主総会の招集期間について
この他にも色々ありますが、法律や公序良俗に反するような内容でなければ定款に記載することができます。
他のルールブックなどではなく定款に定めることで当該事項を明確にすることができる反面、もしその事項を変更しようとする場合は定款の変更手続きが必要になるというデメリットもあります。
定款は会社設立前に作成(原始定款)し、その後内容に変更があるごとに書き換える事になります。
中には変更すると登記手続きが必要となるものもあります。
そのため、設立時には先を見越して定款を作る事が重要です。